コラム

AIと、どう付き合う?
― 公開授業から見えてきた、AI時代の情報モラル ―

2026年09月17日

対象:教育関係者向け


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生成AIを示す抽象的なモチーフを背景に、ノートPCを前に考えながら学ぶ生徒

2026年9月9日、小学5年生を対象に開発中の「AI情報訓練」を使った公開授業を行いました。

授業を見終えたあと、少し引っかかったことがありました。
授業が進み、一人一台の学習用端末を使う場面になると、子どもたちは文字を入力したり、画面を切り替えたりしながら、とても自然に端末を操作していました。

一方で、AIとの距離にはまだ差があります。
すでに使ったことのある子もいれば、まだほとんど触れたことのない子もいます。
そんな子どもたちの様子を見ながら、私の中に一つの問いが残りました。

AIが間違うことを知り、答えを確認できれば、それだけでAIと上手に付き合えると言えるのだろうか。

今回使った「AI情報訓練」は、LINEヤフー、ソフトバンク、静岡大学教育学部の塩田真吾准教授が連携して開発を進めている教材です。静岡大学が持つ教育・情報モラル研究や授業設計の知見と、LINEヤフー、ソフトバンクが持つデジタル社会や技術・サービスに関する知見を組み合わせ、学校の授業で実際に使える教材を目指しています。

目指しているのは、AIの仕組みやリスクを知識として覚えるだけの授業ではありません。
実際にAIを使いながら、何のために使うのか。返ってきたものをどう確かめるのか。そして最後に、自分でどう判断するのか。
そんなことを考える経験そのものを「訓練」にできないか。
そこから、この教材づくりは始まりました。

プレスリリース:「LINEヤフー、ソフトバンクおよび静岡大学と共同で、 小学生49人を対象に、生成AIの仕組みや特性・リスクを学ぶ授業を実施」(2026年9月10日)

01
「AIは間違う」は、伝わりやすかった
02
AIとの付き合い方には、もともとの「土台」がある
03
AIに「答えてもらう」のではなく、一緒に考えてみる
04
授業のあと、AIとの「位置関係」が見えてきた
05
「なかま」を、戻ってこられる言葉へ
06
おわりに:変わり続けるAIと、変わらず大切にしたいこと

01. 「AIは間違う」は、伝わりやすかった

 

AIを上手に活用するための「なかま」という標語を説明するスライド。
な:なんのために使うのかな?
か:確認したかな?
ま:まかせっぱなしでよいのかな?
を説明

※テスト授業で投影したスライドです。本教材は開発中であり、実際の提供時には体裁が異なります。

授業では、生成AIがもっともらしく見える間違った情報を返すことがある、という特徴も扱いました。
この話には、子どもたちも比較的すぐに反応していました。

AIの答えをそのまま信じるのではなく、確かめる必要がある。そうした感覚は、伝わりやすかったように思います。
もちろん、とても大切なことです。
ただ、授業を見ながら私は、「ここだけが残るのは少し違うな」とも感じていました。

今回の教材では、AIを使うときに意識してほしいことを、「なかま」という言葉にしています。
「な」は、なんのためにAIを使うのか。

「か」は、返ってきた内容を確認したか。

「ま」は、AIに任せっぱなしにせず、最後は自分で決める。

AIが間違っていないかを確かめることは、この中では「か」です。
でも、「な」と「ま」も同じくらい大切です。

AIを使えることと、AIと上手に付き合えることは、同じではない。
なぜAIを使うのか。答えが返ってきたあと、それをどう受け取り、最後にどうするのか。
授業後の振り返りでも、「確認」について考える時間をもっと取りたいことや、「な」のワークにはさらに工夫が必要なこと、「なかま」という考え方そのものを、もっと子どもたちの中に残したいことが課題として挙がりました。

私自身も、授業後の子どもたちの言葉の中に、「な」や「ま」まで、もう少し強く表れてくれたらうれしかった。
それが、授業を見終えたときの率直な感想でした。

02. AIとの付き合い方には、もともとの「土台」がある

そして、もう一つ感じたことがあります。

AIとの付き合い方だけを、まったく新しいテーマとして切り離して考えることはできない、ということです。
情報をそのまま信じない。個人情報を大切にする。著作権を考える。情報を発信するときには、その先にいる人への影響にも目を向ける。

どれも、生成AIが登場して初めて生まれたものではありません。
これまで情報モラル教育の中で、大切にしてきたことです。

文部科学省の「初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドライン(Ver.2.0)」(外部サイト)でも、
生成AIの存在を踏まえながら、情報モラルを含む情報活用能力を育てていくことの重要性が示されています。

AI時代になったから、これまでの情報モラルが古くなるわけではない。
むしろ、AIと付き合うためにも、これまで培ってきた情報モラルが下地になる。
今回の授業は、そのことをあらためて感じる機会にもなりました。

03. AIに「答えてもらう」のではなく、一緒に考えてみる

今回の公開授業では、子どもたちが身近な情報について、「そのまま信じてよいのか」「どう確かめればよいのか」を考える場面を扱いました。

自分で考える。
友達と話す。
本やインターネットで調べる。
詳しい人に聞いてみる。
そして今回は、そこに「AIにも聞いてみる」という方法を加えました。

教材でも、情報について考える方法はAIだけではなく、自分で考える、友達と考える、ネットや本で調べる、専門家に聞く、といった複数の方法として示しています。

ここで大事なのは、AIに正解を決めてもらうことではありません。

もともと自分たちが向き合ってきた情報の問題について、AIも一つの相談相手として使いながら、一緒に考える。
AIから返ってきたものも、あくまで判断材料の一つです。
さらに確かめたり、ほかの人の意見を聞いたりしながら、最後は自分で考えて決める。
振り返ってみると、今回の授業で私たちが試していたのは、まさにそんなAIとの付き合い方でした。

04. 授業のあと、AIとの「位置関係」が見えてきた

2人の生徒がタブレットをみながら生成AIについて話し合う様子

公開授業が終わったあと、次の教材について話している中で、もう一つ見えてきたことがあります。

「AI時代の情報モラル」と一言で言っても、人とAIとの関係は、いつも同じではないのではないか。

これは、授業前からきれいに整理できていたものではありません。
実際に授業をし、その後に振り返る中で見えてきた、まだ検討途中の整理です。
今のところ、少なくとも三つくらいの場面に分けて考えると、少し見えやすくなりそうです。

・AIがつくったものを「受け取る」 
AIによってつくられた文章や画像、動画などに触れる場面です。目の前の情報をどう受け取り、どう確かめるのか。自分でAIを操作していなくても、考えることがあります。

・AIと「一緒に考える」 
情報の真偽や個人情報、著作権、コミュニケーションなど、これまでも存在していた課題について、AIも相談相手の一つとして使う場面です。今回の公開授業は、特にここに近いものでした。

・AIを使って「つくり、発信する」 
自分自身がAIを使って何かをつくり、それを誰かへ届ける場面です。「つくれること」と「そのまま使ってよいこと」は同じではありません。その先で考えることがあります。

同じ「AIを使う」という言葉でも、自分がどの位置にいるかによって、必要になる視点は変わります。
そして、この三つのどこにいても、先ほど触れた情報モラルという土台がある。

自分はいま、AIとどんな関係にいるのか。
この見方は、AI時代の情報モラルを考えていくうえで、一つの手がかりになるのではないかと思っています。

05. 「なかま」を、戻ってこられる言葉へ

そう考えてみると、「なかま」も、授業で覚える三文字だけでは少し足りません。

AIに何かを聞こうとしたときに、「何のために使うんだっけ」と立ち止まる。
答えが返ってきたときに、「これはそのまま信じていいのかな」と考える。
そして最後に、「自分はどうしたいんだろう」と戻ってくる。
そんなふうに、日常の中で自然と思考が動くところまでつなげたいと思っています。

開発当初から、私たちは、年に一度、外部講師の話を聞いて終わるのではなく、日常的に情報について考えられる「訓練」にできないか、と考えてきました。

今回の授業では、その入口を見ることができました。
同時に、それを授業の中だけで終わらせず、日常へどう残していくのかという宿題も見えました。

では、先生や保護者の方が、明日から何か一つ試すとしたら。
AIのすべてを理解していなくても、まずできることとして、子どもがAIを使っている場面で、
「何のために使おうとしているの?」
「ほかの方法でも確かめてみた?」
「それを見て、自分はどうしたい?」
と、一緒に考えてみることはできます。

大人がすぐに正解を渡さなくてもいい。
その短いやり取り自体が、AIとの付き合い方を身につける、小さな「情報訓練」になるのではないでしょうか。

06. おわりに:変わり続けるAIと、変わらず大切にしたいこと

今回の公開授業を終えて、教材開発を担当している一人として、課題と同じくらい強く残ったものがあります。
最初に大切にしようとしていた部分の芯は、外していなかったのではないか。
そんな手応えです。

もちろん、改善したいところはあります。
伝え方を工夫したい。「なかま」を、授業で覚えるだけの言葉ではなく、日常の中で戻ってこられるものにしたい。
実際の教室で試したからこそ、考えることはむしろ増えました。
それでも、情報をどう受け取り、どう確かめ、他者や社会への影響をどう考えるか。
その土台の上で、何のためにAIを使うのか、どこまで任せるのか、最後は自分でどう判断するのかを考える。
この方向は、これからますます必要になるのではないかと感じています。

AIの技術は、ものすごいスピードで進化しています。
できることも、サービスも、使われ方そのものも、短い間に変わっていきます。新しい使い方が生まれれば、今はまだ想像していない課題も出てくるでしょう。

当然、教材も一度つくって終わりにはできません。
技術や子どもたちの使い方に合わせて、伝える内容や学び方も更新していく必要があります。

私たちは、デジタルサービスや新しい技術の変化に比較的近いところで仕事をしています。
その便利さや可能性を日々感じているからこそ、技術をただ怖がるのでも、便利だからとそのまま受け入れるのでもなく、
どう付き合うのかを自分で考えることの大切さを、きちんと子どもたちへ伝えたいと思っています。
変わっていくものには、きちんと追いついていく。

でも、情報を確かめること。相手や社会への影響を考えること。そして最後は、自分で考え、判断すること。
技術がどれだけ変わっても、大切にしたい部分まで、一緒に変えてしまう必要はない。

今回の公開授業は、完成した教材を披露する場ではなく、実際の教室で確かめ、その結果を改善へ戻すためのものでした。
11月の無償公開に向けて、今回見えたことをもう一度教材へ戻し、さらに磨いていきます。
そして、公開したら終わりではなく、その先も、学校の先生や子どもたちの声を聞きながら更新していきたい。
AIについての「正解」を覚える教材ではなく、これから何度も出会う新しい場面で、自分で考えるための訓練にする。
担当者の一人として、そんな教材にして、きちんと届けたいと思っています。

「なかま」を意識して、AIを活用してみようというタイトルのスライド。AIは教えてもらうだけの相手じゃない、一緒に考えるなかま、AIと一緒にかんがえよう。と記載されている。

※テスト授業で投影したスライドです。本教材は開発中であり、実際の提供時には体裁が異なります。

参考:無償教材のご案内

生成AIを適切に活用するためには、その前提となる情報モラルについて学ぶことが大切です。

「活用型情報モラル教材 GIGAワークブック」は、情報モラルについて幅広く学ぶことができる教材です。
どなたでも無償でダウンロードしてご利用いただけます。

文:LINEヤフー みらいプロジェクト事務局