コラム

災害が起きた時、あなたは何を頼りに行動しますか? 
- 目に見えない「情報の備え」を、平時から考える 

2026年08月24日

対象:保護者・教育関係者向け
教材
情報防災教育


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スマートフォンを操作する女性と、玄関に用意された防災バッグを描いたイラスト。防災バッグには、懐中電灯、ラジオ、水などがはいっている。

私の家には、災害が起きた時にすぐ持ち出せるよう、防災バッグを用意しています。

中に入っているのは、水や食料、懐中電灯、携帯トイレ、モバイルバッテリーなどです。時々バッグを開き、足りないものや、期限の切れたものがないかも確認しています。

バッグの中身は、目で確かめられます。
けれども、実際に災害が起きた場面を想像すると、私は防災バッグを手に取るより先に、スマートフォンを開くかもしれません。
今いる場所の安全や避難の必要性、家族の安否を確かめるために、電池の残量を気にしながら情報を探し、そこで得た内容をもとに次の行動を決めるはずです。

そこで、ふと気づきました。
私は防災バッグの中身は見直していても、スマートフォンを手にした後、どの情報を頼りに動くのかまでは、十分に考えていなかったのです。
防災バッグの中身だけでは見えてこない、もう一つの備え。

今回は、私たち自身の「情報の備え」について考えます。

01
情報は、入れておくだけでは備えにならない
02
必要な情報は、次の行動によって変わる
03
備えの抜けを見つける「こしあん」
04
「近くの避難所」が、同じ場所とは限らない
05
「知っている」と「使える」の間
06
必要な情報へたどり着き、確かめる
07
おわりに:防災バッグの外側にある備え

01. 情報は、入れておくだけでは備えにならない

水や食料は、平時のうちに用意しておけます。
避難所の場所や家族の連絡先も、紙に書いたり、スマートフォンへ保存したりできます。
しかし、災害時に必要となる情報のすべてを、あらかじめそろえておくことはできません。

自宅周辺でどのような災害が想定されているのか、避難所がどこにあるのかは、事前に調べられます。
一方、避難所が実際に開設されているか、どの地域に避難情報が出ているか、道路や電車が動いているかといった最新の状況は、その時にならなければわかりません。
家族の安否や現在地のように、自分から相手へ伝える情報もあります。
ここに、物の備えと情報の備えの違いがあります。

情報を備えるとは、災害についての知識を集め、保存することだけではありません。
保存しておいた情報が今も使えるかを確かめ、必要な時には最新の情報へたどり着き、それを判断や行動に活かせる状態をつくっておくことです。
あらかじめ残しておける情報はあります。
けれども、それを持っているだけでは、状況に応じた判断にはつながりません。

必要な時に情報へたどり着ける道筋まで整えておく。それが、情報の備えです。

02. 必要な情報は、次の行動によって変わる

スマートフォンを手にした大人の前から青い道筋が伸び、家族、避難所、交通、地図、通行止めなどを示す記号へつながっているイラスト。災害時に必要な情報へたどり着く経路を平時から整えておく「情報の備え」を表現している。

大型の台風が近づいている時、自宅で家族と一緒にいる場面を想像してみます。
この時、行動を決める手がかりになるのは、自宅周辺で想定される被害や警戒情報、避難所の開設状況などです。
そして、避難すると決めた後には、そこへ向かう道の安全性が重要になります。
同じ台風の中でも、避難を決める前と、移動を始めた後では、必要な情報がすでに変わっています。

次に、外出先で突然、大きな地震が起きた場面です。
電車が止まり、駅には多くの人がいます。家族が今どこにいるかもわかりません。

この場合には、現在地の周辺が安全か、その場にとどまるべきか、近くに移動できる場所があるかといった情報が必要になります。家族の安否を確かめるだけでなく、自分の無事や現在地を伝えることも欠かせません。

今回参考にしている教材でも、自宅で台風に備える場面と、外出先で地震に遭う場面を比べながら、必要な情報の違いを考える構成になっています。
必要な情報を決めるのは、災害の種類だけではありません。
今どこにいて、誰と一緒にいて、次に何をしようとしているのか。
必要な情報は、次の行動によって変わります。

そのため、「災害が起きたら、この情報を見ればよい」という一つの答えを覚えるだけでは足りません。
まずは、その時の自分が何を決めようとしているのかを捉える。それが、必要な情報を見つける出発点になります。

03. 備えの抜けを見つける「こしあん」

必要な情報は、その時の状況によって変化します。
だからといって、起こり得る場面をすべて想定し、必要な情報を一つずつ覚えておくことはできません。
そこで役立つのが、「こしあん」という三つの視点です。

「こ」――行動する前に確認しておく情報

「し」――信頼できる最新の情報を確認するための方法

「あん」――安否情報などを共有するための方法

「こ」は、自宅周辺で想定される災害や避難経路など、平時から確認できる情報です。「し」は、気象や避難、交通など、変化する情報をどこから確認するか。「あん」は、安否や現在地をどのように伝え合うかを表します。

近くの避難所を知っている人は少なくないでしょう。
けれども、「こ」の視点で見直すと、場所は知っていても、そこへ向かう道までは確認していなかったことに気づくかもしれません。同じように、最新情報の確認先や、家族へ安否を伝える方法にも、まだ決めていない部分が見つかるかもしれません。

「こしあん」は、災害時の行動手順を暗記するための言葉ではありません。
情報を増やすためではなく、今ある備えのどこに抜けがあるのかを見つけるための視点です。

04. 「近くの避難所」が、同じ場所とは限らない

「何かあったら、近くの避難所で会おう」
家族でそう話していたとしても、それだけで認識がそろっているとは限りません。
ある人は自宅の近くにある小学校を思い浮かべ、別の人は、その時にいる場所から最も近い避難所を考えているかもしれません。
連絡方法についても同じです。

「スマートフォンで連絡を取ればよい」と考えていても、電話をするのか、メッセージを送るのか、最初にどの方法を試すのかまでは共有されていないことがあります。
自分が知っていることと、家族の間で共有されていることは、同じではありません。

もちろん、あらゆる状況を想定し、細かな行動をすべて決めておくことはできません。事前に考えていた避難場所へ向かえないことも、用意していた連絡手段が使えないこともあります。
それでも、すぐに連絡が取れない時には、まずそれぞれが身の安全を確保する。落ち着いた後に、あらかじめ共有した方法で安否を伝える。

そうした基本的な考え方がそろっていれば、離れていても、相手がどのように動こうとしているのかを、ある程度想像できます。
家族で共有しておきたいのは、連絡手段の名前だけではありません。
離れた場所にいる時に何を優先し、どのように連絡を取り合うのか。その大まかな方針まで話しておくことで、一人の知識が、家族の備えへ変わっていきます。

05. 「知っている」と「使える」の間

自治体の防災情報や災害用伝言板について、名前を聞いたことがある人は多いと思います。
けれども、存在を知っていることと、混乱している時に実際に使えることには、少し距離があります。
平時に自治体の防災ページを開いてみると、自分の地域の情報がすぐに見つからなかったり、避難所の情報が予想していた場所に掲載されていなかったりすることがあります。
防災に役立つアプリも、必要な地域が登録されていなければ、欲しい情報が届きません。
一度使ってみると、「準備していたつもり」の中にある小さな穴が見えてきます。
ここまで、スマートフォンで情報を得る場面を中心に考えてきました。

ただ、災害時にも端末を使えるとは限りません。通信が不安定になったり、電池が切れたりすることがあります。
連絡先や家族で決めた集合場所など、最低限の情報を紙でも確認できるようにしておけば、デジタルだけに頼らずに済みます。
防災バッグに入れた懐中電灯は、持っているだけでは十分ではありません。電池が入り、実際に点灯して初めて、使える備えになります。

情報を得たり、安否を伝えたりする方法も同じです。
平時に一度使い、必要な情報へ迷わずたどり着けるかを確かめておく。そこで初めて、保存していた情報や知識が、実際の備えとして働き始めます。

06. 必要な情報へたどり着き、確かめる

デスクでスマートフォンを操作する女性と、周囲に配置された防災グッズを描いた、クリーンなフラットイラスト。女性の前には、白い十字マーク付きの青い救急バッグ、懐中電灯、モバイルバッテリー、ノート、そして青い位置ピンが付いた開いた地図が置かれている。女性のスマートフォンから上部へ、アプリで確認している情報を表す3つの円形吹き出しが点線でつながっている。左の吹き出しには「だ」の文字と避難所(場所)のアイコン、中央の吹き出しには「い」の文字と時計(時間)のアイコン、右の吹き出しには「ふく」の文字と避難カード(グッズ)のアイコンが、日本語のひらがなとともに描かれている。

災害時に流れてくる情報を、すぐに信じたり広めたりせず、一度立ち止まって確かめるための合言葉に、「だいふく」があります。

「だ」――誰が言ったのか

「い」――いつ言ったのか

「ふく」――複数の情報を確かめたのか

誰が発信した情報なのか、いつ出された情報なのかを確認し、ほかの情報とも照らし合わせる。「だいふく」は、受け取った情報が信頼できるものかを確かめるための視点です。

今回紹介した「こしあん」は、必要な情報へたどり着き、家族や周囲の人と共有できるように備えるための視点です。
必要な情報へたどり着けても、その内容が古かったり、発信元がわからなかったりすれば、適切な判断にはつながりません。
一方で、信頼できる情報であっても、自分の状況や、これから取ろうとしている行動に関係がなければ、十分な判断材料にはなりません。

「こしあん」で必要な情報へ向かう道筋を整え、そこで得た情報を「だいふく」の視点で確かめる。
二つがつながることで、情報は次の行動を支える材料になります。教材でも、これらは災害時に情報を活用するための考え方として整理されています。
情報に振り回されず、必要な情報を自分や周囲の人の行動に活かす。「だいふく」と「こしあん」は、その両方を支える考え方です。

07. おわりに:防災バッグの外側にある備え

次に防災バッグを開く時、私は中に入っている物だけでなく、地域の防災情報を確認する方法や、家族と離れている時の考え方、スマートフォンが使えない場合の選択肢も一緒に見直したいと思います。

すべての災害を予測し、どのような場面にも通用する答えを用意することはできません。
それでも、情報へ向かう道筋を持っていれば、すべてをその場で考え始めずに済みます。
避難所の場所や連絡先は、紙やスマートフォンに残せます。けれども、災害時の最新情報や、それをどう判断し、行動へ結びつけるかまでは保存できません。
必要な情報へたどり着き、使える状態にしておく。
それが、防災バッグの外側にある、目には見えない備えです。

ご参考:情報の備えを考えるための教材

今回取り上げた「情報の備え」について、台風や地震などの具体的な場面を通して考えられる教材として、「情報防災訓練(情報防災バッグ編)」を公開しています。

災害の種類や置かれた状況によって必要な情報がどう変わるのかを考え、その情報を得る方法や、安否を共有する方法を整理する教材です。小学校高学年から高校生までを対象とした、50分の授業として活用できます。
学校での授業に加え、家庭で情報の備えを話し合う際の参考としてもご覧ください。

文:LINEヤフー みらいプロジェクト事務局