コラム

情報モラル教育を地域でどう進めるか
鎌倉市に聞く「GIGAワークブック」活用事例

2023年06月29日


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「GIGAワークブック」自治体導入事例のご紹介、神奈川県鎌倉市と記載のある画像

LINEヤフーみらいプロジェクトでは、学校や自治体で活用いただける情報モラル教材として、静岡大学との共同研究をもとに作成した「GIGAワークブック」を公開しています。

GIGAスクール構想により、児童生徒が1人1台端末を日常的に活用する中で、情報モラル教育は特別な時間だけでなく、日々の学校生活や学習活動の中で継続的に考えるテーマとなっています。

一方で、現場では「どの場面で教材を活用すればよいのか」「先生方に負担なく使ってもらうにはどうすればよいのか」「地域全体で情報モラル教育を進めるには何が必要か」といった悩みもあるのではないでしょうか。

本コラムでは、旧LINEみらい財団(現LINEヤフー みらいプロジェクト)が勉強会で紹介した自治体の取り組みを、導入・活用事例として順次ご紹介していきます。

今回は、神奈川県鎌倉市において、学校現場から上がった「制限するだけでは限界がある」「多忙な先生でもすぐ使える教材がほしい」という課題感を出発点に、教育委員会と学校が一体となって共同開発したオリジナル教材「GIGAワークブックかまくら」を取り上げます。

すでにGIGAワークブックや関連教材を活用されている学校の皆さまには、授業や校内での活用を広げるヒントとして、また、これから情報モラル教材の導入を検討される自治体・学校の皆さまには、無償教材の活用イメージとして、ぜひご覧ください。

01
現場の切実な要望と教育委員会の想いがマッチングした瞬間
02
先生の負担をゼロに。「15分のモジュール」と「手引き」へのこだわり
03
教独自の時間設定「TTFG」で朝の15分をアップデート
04
自走する研修と、関心の低い層へのアプローチ
05
まとめ:教育委員会と学校の二人三脚が育む、これからの情報モラル教育

プロフィール - 話者の紹介

濱地 優(はまち ゆう)氏


鎌倉市教育委員会 教育指導課 指導主事。市全体でのGIGAスクール構想推進と、情報モラル教育の基盤づくりを牽引。

田中 智明(たなか ともあき)先生 
阿部 桃子(あべ ももこ)先生

鎌倉市立深沢小学校(児童数約800名の大規模推進校)の教員。現場の課題感から教育委員会へ相談を持ちかけ、教材の共同開発や校内での実践を主導。

1. 現場の切実な要望と教育委員会の想いがマッチングした瞬間

 

――まず、鎌倉市でオリジナルの教材「GIGAワークブックかまくら」を作ることになったきっかけを教えてください

濱地氏:
2021年度から端末の本格運用が始まり、情報モラルのあり方に悩んでいたとき、推進校である深沢小学校から「他自治体の優れた教材を参考にできないか」と相談を受けたのが始まりでした。

教育委員会としても市全体で推進する仕組みを探していた折、LINEみらい財団(現:LINEヤフー みらいプロジェクト)の「SNSノート」に各自治体版があることを知り、これらがマッチングしたんです。そこから静岡大学の塩田准教授や深沢小学校の先生方も交え、試行錯誤しながら「鎌倉版」の開発へ突入しました。 

―― 学校の現場としては、当時どのような課題に直面していたのでしょうか?

田中先生・阿部先生:
深沢小学校は児童数約800名と市内最大規模です。当初はトラブルが起きるたびにルールを作って指導していましたが、「禁止・制限」のルールばかり増えて活用の幅が狭まり、項目が多すぎて児童も職員も意識しづらくなっていました。

また、学級によって活用状況に差が出ていたため、「とにかく先生方が負担なく『使ってみよう』と思える、誰でも使いやすい共通の教材」を求めていたんです。

GIGAワークブックかまくらの教材イメージ画像

2. 先生の負担をゼロに。「15分のモジュール」と「手引き」へのこだわり

 

――共同開発にあたり、学校側からはどのような要望を出されたのですか?

田中先生・阿部先生:

授業準備に負担感や抵抗感のある先生が多いため、次の4点をお願いしました。 「学校ごとのオリジナルページを作ること」「児童が自分で操作を確認できること」「15分の短時間(モジュール)で取り組めること」、そして「特別な知識がなくてもスムーズに授業ができる手引きをつけること」です。

――濱地さん、教育委員会としてはこの現場からの要望をどのように受け止め、普及させましたか?

濱地氏:
せっかく良い教材ができても、現場が使いにくければ意味がありません。鎌倉市では全ての教職員・児童のiPadに、このワークブックが置いてあるホームページへのショートカットリンクを直接配信し、教育ネットワーク上の共有フォルダからいつでも「すぐ使える状態」を作りました。

男性教諭とのインタビューシーンの画像とクラスの様子
女性教諭とのインタビューシーンの画像とクラスの様子

――ダウンロードのアクションと研修を自然に結びつけたのですね。もう1つのアプローチはどのようなものでしょうか。

上田氏:
「体験型の演習」の実施です。実際の授業を想定したワーク(カードの並び替えなど)を、まずは先生方自身に体験してもらいました。

演習でカードを並び替え、隣と比較する活動の中で、自然に会話が生まれたり、隣の人との価値観のズレを感じたりと、参加した先生には、この教材の良さを実際に体感していただくことができました。「これなら簡単だし、授業で使ってみたい!」と自発的に思ってもらうための重要なプロセスです。

3. 独自の時間設定「TTFG」で朝の15分をアップデート

 

――実際に深沢小学校では、どのようにこの教材をカリキュラムに組み込んでいるのでしょうか。

田中先生・阿部先生:
私たちはこの時間を「TTFG(つながろう・つなげよう・ふかさわ・GIGA)」と名付け、2週間に1回、朝の15分間の朝学習(モジュール時間)を設定しました。

45分間の授業時間をわざわざ新しく確保するのは難しくても、テーマごとに15分単位で切って使える教材なので、朝の短い時間でも非常に取り組みやすいです。事前に「TTFG」という名前を予定表に載せることで、児童や保護者にも「情報モラルを学ぶ時間なんだ」と自然に周知できるようになりました。

――実際に授業を行った先生方や、子どもたちの反応はいかがでしたか?

田中先生・阿部先生:
先生方からは、「活用の手引きがあるためICTの専門知識がなくても進めやすい」「一問一答ではなく、話し合いながら周りの子との価値観のズレに気づける形式なので、子どもたちが主体的に考えてくれる」と大好評です。

子どもたちも、iPadのマークアップ機能を使ってPDFの教材に直接書き込みながらクイズ形式で楽しんでいます。「ダメ」と押し付けられるのではなく、自分で考えるので納得感があるようです。関係ないサイトを見ていた子が、「学校の端末は学習のために使うんだ」と自分を振り返るきっかけにもなっています。

4. 自走する研修と、関心の低い層へのアプローチ

 

――自治体として、今後の普及や研修の予定について教えてください。

濱地氏
これまでは外部の講師を派遣してもらう形でしたが、今後は各学校が「自走」して教職員研修を行えるように、「研修のための研修」の仕組みを作っていきたいと考えています。

田中先生・阿部先生
学校現場としては、まだ端末の活用が進んでいない学級や、まだ関心の薄いご家庭に対してどのようにアプローチしていくか、ここが次の試行錯誤のステージですね。

GIGA端末で学習する生徒の画像
GIGA端末にGIGAワークブックを投影して学習しているシーン

まとめ:教育委員会と学校の二人三脚が育む、これからの情報モラル教育

鎌倉市の事例は、学校現場の「困った」という声に教育委員会が素早く耳を傾け、民間や専門家の知見を繋ぐことで、現場目線の使いやすい教材を生み出した先進的なケースです。ただ制限するのではない、デジタル社会を生き抜く「生きた力」の育成が、朝の15分の積み重ねから始まっています。

濱地氏:
「GIGAワークブックかまくら」は単にルールを縛るものではなく、積極的にICTを活用していくための教材です。これからも学校と連携し、より良いICT活用ができるよう支援を続けていきます。


LINEヤフー みらいプロジェクトでは、教員向けの研修動画をご用意しております。動画を再生しながら授業を進行いただくことも可能です。ぜひ一度、お試しいただけますと幸いです。

教員向け研修動画 スタンダード版(小学校高学年向け)

教員向け研修動画 アドバンスト版(中・高校向け)

汎用版「GIGAワークブック」教材お申し込み

いかがでしたか? LINEヤフー みらいプロジェクトでは、自治体様の実践事例を通じて、より多くの皆様に教材の魅力や活用方法を知っていただき、教育現場での活用の輪を広げていければと考えています。

文:LINEヤフー みらいプロジェクト事務局

※本記事は、2023年に「LINEみらい財団(現:LINEヤフー みらいプロジェクト)」が鎌倉市教育委員会および鎌倉市立深沢小学校と実施した取り組み(発表会内容)をもとに、編集・作成したものです。